2005年09月28日

「ヴェニスに死す」トーマス・マン

「東葛映画祭」勝手に応援企画
2005年10月14日(金)〜16日(日)、千葉県の5市(我孫子・柏・流山・野田・松戸)9会場で行われる「東葛映画祭」に因んで、しばらく僕の好きな映画絡みの本を紹介します。
「東葛映画祭」については、以下のURLでご覧ください。
http://www.tokatsufilm.com/

ルキノ・ビスコンティ監督の名作「ベニスに死す」。1971年、イタリア映画(手元の資料はイタリア映画となっているのですが、どこかとの合作映画だったように記憶しています。気のせいかな?)です。
理知的な芸術を信じるドイツの老音楽家(ダーク・ボガード)が、療養で訪れたベニスで感覚的な芸術を感じてしまう。そして感覚的な芸術に冒されるようにして、ついには死んでしまうストーリー。このストーリーを覚えていない人でも、老作曲家が心を踊らせる少年の美しさは忘れられないのではないでしょうか。
美少年を演じたのはビョルン・アンドレセン。僕は残念ながら、この俳優の出ている他の作品を知りません。もしあったとしても、観たくない気がします。特に大人になってからの作品は・・・。
原作はトーマス・マンの「ヴェニスに死す」。実吉捷郎訳で岩波文庫版がでています。
ヴェニスに死す
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主人公の老音楽家のモデルはマーラーのようです。映画の中でもマーラーの作品が流れています。
なるほど、と思います。マーラーについて知りたくなった方には、音楽之友社の「作曲家・人と作品シリーズ」から村井翔著の「マーラー」がでています。
マーラー
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posted by 本読人 at 22:46| Comment(15) | TrackBack(1) | 外国文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月24日

「宮本武蔵」吉川英治

「東葛映画祭」勝手に応援企画
2005年10月14日(金)〜16日(日)、千葉県の5市(我孫子・柏・流山・野田・松戸)9会場で行われる「東葛映画祭」に因んで、しばらく僕の好きな映画絡みの本を紹介します。
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とにかく中村錦之助に尽きるでしょう。5部作の最初の作品が公開されたのが1961年。後年テレビに進出してくる前の若々しい錦之助を見ることができます。
CGが無かった時代、しかも西部劇のように大自然の迫力を借りることもできない日本映画においては、俳優のエネルギーが作品の迫力の源だったのだと感じました。
宿命のライバル佐々木小次郎に高倉健、沢庵和尚に三國連太郎と豪華なキャスティング。内田吐夢監督の東宝映画です。

原作は吉川英治で、僕が読んだ文庫版は全8巻でした。
特に印象に残っているのが、一乗下り松の決闘です。吉岡一門との大勢対一人の闘い。勝敗を決するために一門の大将をつとめる少年を真っ先に切り、あとは殺し合いを終わらせ、逃げ延びために切り続ける武蔵。武蔵にとっては、最初から勝つことよりも、活路を見いだすための闘いだったように思えます。あるいは武蔵にとって「勝つ」は「活つ」だったのでしょうか。
さすがに、読みごたえのある作品でした。
宮本武蔵
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「五輪書」とはいっても、オリンピックの本ではありません。宮本武蔵が書いた兵法の本です。そういう意味では、オリンピックに役立つかもしれませんが・・・。
武蔵の哲学の一端に触れることができる本です。
紹介する「定本五輪書」は魚住孝至校注で新人物往来社。2005年3月刊行で、読みやすくできています。
定本五輪書
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posted by 本読人 at 12:27| Comment(6) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月22日

「白鯨」ハーマン・メルヴィル

「東葛映画祭」勝手に応援企画
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グレゴリー・ペックという俳優は、上手いんだか下手なんだか分からなくなります。男女の細かい心理みたいな演技を観ているとオイオイ、とツッコミたくなります。でも、男同士みたいな大雑把な世界観の映像には、演技がピッタリあっているような・・・。「白鯨」はもちろん後者の映画です。
ジョン・ヒューストン監督、1956年のアメリカ映画です。白鯨モービィ・ディックと、海の男たちの闘い。特に執念を燃やすエイハブ船長をグレゴリー・ペックが演じています。
ところで未確認なのですが、脚本でレイ・ブラッドベリも参加していると聞いたことがあります。
原作の「白鯨」はハーマン・メルヴィル作の、世界を代表する海洋小説です。岩波文庫の八木敏雄訳を紹介します。
白鯨
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「白鯨」のもとになったといわれている出来事の一つに、捕鯨船エセックス号が鯨に襲われた海難事故があります。それをテーマにしたのがナサニエル・フィルブリックの「復讐する海」。
僕は未読なのですが、かなりヘビーな内容だそうです。相原真理子訳です。
復讐する海
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posted by 本読人 at 11:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 外国文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月20日

「死の棘」島尾敏雄

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理由は定かではないのですが、近年、日本の文芸作品の映画化は、あまり巧くいっていないような印象を受けます。映画製作サイドの問題なのか、あるいは原作である文芸作品の問題なのか。あるいは、気のせいなのか・・・。
そんな中で「泥の河」でも成功した小栗康平監督は、日本の文芸作品を映画化する名手だと思います。今回取り上げる「死の棘」は松坂慶子、岸部一徳主演の1990年、松竹作品です。
原作は島尾敏雄。あまりにも苦しい私小説です。そして僕の中では、極めて重要な日本文学の一冊です。
死の棘
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そして「死の棘日記」は、「死の棘」に書かれた暮らしを綴った、さらに苦しい日記です。
つまり、映画「死の棘」→小説「死の棘」→「死の棘日記」という順に実態に近づいていきます。もちろん、さらに先には「死の棘日記」→「トシオとミホの実生活」があります。
映画「死の棘」を観た人は、→にそって、どうぞ遡ってみてください。
死の棘日記
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posted by 本読人 at 11:44| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月19日

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・キンドレッド・ディック

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ハリソン・フォード主演のSF映画「ブレードランナー」(1982年 リドリー・スコット監督 アメリカ)の原作です。
人間とは? 生きているっていうことは? そんなことを考えさせられるSF作品です。SFであることに呑み込まれるのではなく、SFであることを最大限に活かした小説だといえるでしょう。
「ブレードランナー」をご覧になった方はもちろん、観ていない方も、どうぞ読んでみてください。朝倉久志訳です。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
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同じF・K・ディックのSF小説「マイノリティ・リポート」もお薦めです。やはり、同タイトルで映画になっています。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。スティーブン・スピルバーグ監督で、トム・クルーズ主演です。
僕は小説の方を先に読んでいて、ストーリーを知っているために、映画の方を観ることができずにいます。それは原作を越えられないだろう、というようなことではなく、あまりにも身につまされるストーリーであるために、苦しくて観ることができないということです。
同じ人間同士でありながら、将来犯罪を犯すと判断された人間を事前に捕縛するというシチュエーション。それは多くの人が気づかないところで、あるいは気づいていても知ろうとしないところで、ずっとこの日本でも行われてきた、そして現在でも行われていることなのです。
同様に何らかの理由で内容の一部を知ってしまったために、苦しくて観ることができない映画に「エクソシスト」と「シザーハンズ」があります。作品を前にして怯んでしまう自分に気がつく時、映画というものの凄味を実感してしまいます。
小説の方の「マイノリティ・リポート」も、もう読み返せそうにありません。でも、未読の方にはぜひ読んでほしい作品です。こちらも朝倉久志訳です。
もし、SF小説を、他の小説よりも低く感じている人がいたなら、あまりにももったいないことです。
マイノリティ・リポート
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posted by 本読人 at 10:45| Comment(9) | TrackBack(1) | 外国文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月18日

「絶唱」大江賢次

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映画を作っている人達にはあるいは失礼なことなのかもしれませんが、スクリーンに美しい人がいると、それだけでその映画が忘れられない作品になる、そんなことが僕にはあります。
滝沢英輔監督、日活版の「絶唱」は、僕にとってそんな作品です。舟木一夫・和泉雅子、三浦友和・山口百恵よりも、小林旭・浅丘ルリ子主演の1958年作品が僕には忘れられません。とにかく若い頃の浅丘ルリ子が美しいのです。
原作は大江賢次。身分違いの男女の純愛物語です。身分違いという設定は現在では難しいものがありますが、「障壁の大きな恋」という大きな括りで考えると、時代を超えた永遠のテーマなのでしょう。先に紹介した「美女と野獣」もそうした括りの作品ですし、最近流行りの「電車男」も(観てはいないのですが、たぶん・・・)そうした作品なのだと思います。
絶唱
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日本映画の女優たちが、本当に「星」だった頃を写した写真家秋山庄太郎の作品集「麗しの銀幕スタア」を紹介します。実は、僕はこれを観ていなくて、持っているのは別の写真&対談集です。それが絶版のようなので、今回はこっちを紹介しました。おそらく、僕が持っているものと同じように、銀幕のプラネタリウムのような一冊なのだと想像しています。
もちろん、ノスタルジーばかりではなく、今の女優にも、本当のスターがいてほしいのですが・・・。
麗しの銀幕スタア
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posted by 本読人 at 02:31| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月15日

「美女と野獣 ある映画の日記」ジャン=コクトー

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ボーモン夫人の原作も、ジャン=コクトーの監督・脚本でこのとおり。
「美女と野獣」は、僕のもっとも好きな映画の一つです。ストーリーは、みなさんご存じでしょう。あるいはディズニーのアニメ作品を観たという人もいるかもしれません。もちろん好みは人それぞれです。でも、それを承知で言うのですが、コクトー版「美女と野獣」こそが本物です。
紹介する「美女と野獣 ある映画の日記」(秋山和夫訳)は筑摩書房のリュミエール叢書の一冊です。撮影日記として、とても貴重なものです。
美女と野獣
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コクトーは作品制作において、歌舞伎等日本の文化の影響を受けています。実際に日本を訪れているのですが、そのことをテーマにした本が昨年中央公論新社から出版されました。
タイトルは「コクトー、1936年の日本を歩く」(西川正也)です。ちなみに映画「美女と野獣」は1946年の作品です。どうでしょう、野獣の住む城の様式美、そしてジャン=マレー演ずる野獣のメークが歌舞伎の隈取りに見えてこないでしょうか・・・。
コクトー、1936年の日本を歩く
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posted by 本読人 at 18:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 外国文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月07日

「夢のあとに」葛田一雄

夏休みの本の特集で、「路傍の石」などとりあげてみました。そういう時代があったことを子供たちに知ってほしかったし、その頃から変わらないもの、変わったものを分かって欲しかったからです。
そして同じように、日本の昭和30年代を描いた本を紹介します。作者である葛田一雄さんが、自身の過ごした逗子の街を舞台にして小説にしました。
特に、今の中学生たちに読んでほしい一冊です。
夢のあとに
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そして、もう一冊紹介したい本と、一つの試みがあります。
「夢のあとに」は新刊ホヤホヤの本でその刊行状況を調べに出版社である水曜社のサイトに行って見つけました。
『いのち(仮題)』という絵本の刊行計画です。そこに書かれていたメッセージをそのまま書きます。
「絵本『いのち(仮題)』の刊行を目指して、ただいま予約を募集しています。本書の刊行には500冊以上の予約が必要です。みなさまのご協力をお願いいたします 。経費を除いた売上げは、全額寄付される予定です」
とのこと。寄付の予定先などは、サイトに詳しく書かれています。どうぞ、下記の水曜社のサイトに行って見てください。そして「カンボジアの悲劇を繰り返さないために 絵本『いのち(仮題)』予約の受付」のページを開いて見てください。
「水曜社 ホームページ」

僕らは、情報が氾濫するこの世の中で、出版社から出された本を消費するという一方通行の流れで本を読んでいます。もちろん多くの人達が望む本が出版されてはいるのですが、それはつまり「僕が望む本」が必ずしも出版されていないということでもあります。
そういう時代にあって、読者自身がスポンサーとなるようなこの予約刊行の方法は、与えられた本ではなく、「オイラ達の読みたい本」を読むという意味を持ちます。他にもファンドを募っての出版なども考えられるでしょう。書籍流通の一つの方法としても注目される形です。
posted by 本読人 at 17:21| Comment(8) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月05日

「八重山の風と光」大塚勝久

台風14号が来ています。台風というと、久高島を目指して行って、台風のために上陸できなかった去年の沖縄旅行を思い出します。今回の台風、沖縄のみなさんは大丈夫でしょうか。
写真集「八重山の風と光」を紹介します。実は、この写真集を持ってはいないのです。大塚勝久さんの写真集はCDで持っています。沖縄の「青」をとっても美しく撮る一人だと思います。
八重山の風と光
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「沖縄」そして「青」ということで、本を紹介するというブログの主旨に反してCDを紹介します。数年前に奥さんがなんとなくCD屋で見かけて買って来て、それから一家でずーーっとはまっています。特に娘は、キャーキャー言いながら聴きまくっています。
女性2人のグループ「やなわらばー」の「青い宝」。やなわらばーは、沖縄の「青」を一番美しく歌っているミュージシャンだと思います。下記にホームページを紹介しますので、ぜひ入って「やなわらばーのうた」という部屋に行ってみてください。何曲か少しだけ試聴できます。
そして、よかったらぜひ買って聴いてみてください。「青い宝」のCDは、中でも、特にお薦めです。忘れかけていた大切なものを思い出すかもしれません。それから、部屋の掃除とかをしなくてもいいような気分にもなります。
「やなわらばー オフィシャルホームページ」

台風の被害がでませんように。



posted by 本読人 at 20:45| Comment(8) | TrackBack(0) | 画集・写真集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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